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朝日新聞の報道姿勢は大阪地検特捜部と50歩100歩
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 こんにちは。第2、第4金曜日を担当する日経バイオテク副編集長の河野修己です。

 月曜日と水曜日のメルマガでも取り上げていますが、今週はやはりこの件について
書かざるを得ません。朝日新聞が、東京大学医科学研究所が実施したがん治療ワクチ
ンの臨床研究について、安全性に関する情報開示に問題があったと厳しく非難した記
事のことです。

 私は今週の月曜から水曜まで、宮崎で開催された国際細胞治療会議を取材していた
のですが、大新聞の影響力はすごいもので、同会議に参加していたがん研究の専門家
や規制当局の人たちさえ、基本的な事実関係を誤解している人がかなりいました。

 記事では、がん治療ワクチンの臨床研究で1人の被験者において、重篤な有害事象
と判断される消化管出血が起こったが、それを共同研究先に伝えなかったことを問題
にしています。また、一連の経緯の責任者として、中村祐輔教授の名を挙げています。

 この記事は10月15日に掲載されましたが、同日に医科研が開催した記者会見で、こ
の記事だけでは分からなかった点が判明しました。それは、「消化管出血が起こった
臨床研究は共同研究ではなく、医科研単独のものだった」「問題となった臨床研究に
中村教授は関与していなかった」「消化管出血はワクチンによる副作用ではなく、が
んの進行による自然な出血であると判断された」「中村教授が関係する共同研究でも
同様の消化管出血が起こった際は、共同研究先とのミーティングで注意を喚起してい
た」という点です。

 私も記者会見に出席していたのですが、医科研側の説明や記者との質疑応答を聞い
た率直な感想は、「この事実関係でよくこの内容の記事が書けたな」というものです。
他誌の記者も同様の印象を持ったようで、翌日の報道は医科研の説明を短く伝えたも
のがほとんどでした。

続報、東大医科研ががんワクチン報道に関して会見、中村教授は
「自然な出血がなぜ問題になる」と憤りを隠さず
http://biotech.nikkeibp.co.jp/bionewsn/detail.jsp?newsid=SPC2010101576695

 医科研の関係者に話を聞くと、朝日新聞の取材は1年以上前に始まっています。取
材の過程で医科研は何度も上記のような点を説明し、対応に問題はなかったと主張し
たといいます。しかし、朝日新聞が医科研に送付した質問ファクスと記事を見比べる
と、最初に記者が立てたストーリーを全く見直していないことが分かります。

 「あらかじめ描いた事件の構図に沿って自白を迫る。否認しても聞く耳をもたず、
客観的な証拠を踏まえずに立件する。郵便不正事件での検察の捜査はそんな強引なも
のだった」

 これは、厚労省の村木厚子氏の無罪判決を受けて朝日新聞が掲載した社説の中の
一文です。私は今回の朝日新聞の記事に、村木氏を起訴した大阪地検特捜部と同様
の強引さを感じるのです。

 解説記事を書くときや調査報道では、我々記者はかならず仮説と検証を繰り返し
ます。最初に立てた仮のストーリーを取材で集めたデータを基に検証し、ストーリー
が間違っていると感じれば修正しなければなりません。朝日新聞の記者は1年以上も
あった取材期間に、それを真摯にやったのでしょうか。

 さらに、その後の報道は、マスコミとしての誠実さに欠けていると言わざるを得ま
せん。報道を受けて10月20日に、複数のがん患者団体が共同で声明を発表しました。
報道により一部の臨床研究が停止されたためです。

 ちょっと長くなりますが、声明の一部分を引用します。声明では、「治験や臨床試
験では、一定のリスクがあることも忘れてはなりません。がん患者さんが参画する治
験や臨床試験において、被験者の保護には十分すぎるほどの配慮が不可欠です。一方
で、治験や臨床試験のリスクについては、正しい理解と適切な検証が必要であり、不
確かな情報や不十分な検証に基づいて、治験や臨床試験のリスクが評価されるべきで
はありません。特に、東京大学医科学研究所の臨床研究に関する報道を受けて、当該
臨床研究のみならず、他のがん臨床研究の停止という事態が生じており、がん臨床研
究の停滞が生じることを強く憂慮します」としており、その上で次の3点を要望して
います。

・「がん患者の命を救うがん臨床研究が、適切に推進されるとともに、その推進にあ
たって必要な国のがん研究予算が、根拠とオープンな議論に基づいて拡充されること
を求めます
・がん臨床研究の推進にあたっては、臨床研究に参画する被験者の保護が、十分に行
われること、被験者の保護については、情報が広く開示されるとともに、事実と客観
性に基づいて、専門家によるオープンな議論と検証が行われることを求めます
・臨床試験による有害事象などの報道に関しては、がん患者も含む一般国民の視点を
考え、誤解を与えるような過激な報道ではなく、事実をわかりやすく伝えるよう、冷
静な報道をお願いします。

 さて、この声明を朝日新聞はどう伝えているのか。見出しは、「患者団体『研究の
適正化』を」。記事本文は、「新たな治療法や新薬の臨床研究を適切に進めるよう求
める声明文を発表した」「有害事象などの報道では、がん患者を含む一般国民の視点
を考え、事実をわかりやすく伝えること」となっています。

 声明文を読めば、患者団体が最も訴えたいのは、研究の適正化ではなく報道の適正
化であることは明白です。また、記事中では、要望の中にある「誤解を与えるような
過激な報道ではなく」「冷静な報道」という字句も抜け落ちています。

 朝日新聞は今回の報道の大義を「患者の人権と安全を守るため」と繰り返し主張し
ていますが、他ならぬその患者団体から批判を受けたことを伝えてこそ、公平公正な
報道というものでしょう。

 
日経バイオテク副編集長 河野修己

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■□■ BTJ /HEADLINE/NEWS 2010/10/22 THE PRIME MAIL 第1495号
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コメント
無題
http://twitter.com/ganiryo

ツイッター、みつけました。
【2010/10/25 15:39】 NAME[そらのふら] WEBLINK[] EDIT[]
無題
http://lohasmedical.jp/news/2010/10/31222936.php?page=1

私の思いとしては、
癌の手術をする前に抗がん剤で
腫瘍を小さくするのには、つらい副作用と
まず、戦わなくてはならない場合も
あるんじゃないかって、
思うんですよね。
いくら、抗がん剤が進化しているといっても、
なにかしら、副作用はあるだろうし、
体が喜ぶものはなに?って考えると、
免疫を高めるワクチンにはかなわないとおもうし
「癌治療の最初に免疫力を高めること」
それが、大事なんじゃないかって、
わたしは、そう、おもっているんですが・・・
【2010/11/03 21:27】 NAME[そらのふら] WEBLINK[] EDIT[]
がんワクチン緊急シンポジウム
すみません。
書き忘れたけど、さっきのリンクは
がんワクチン緊急シンポジウムの
報告(ロハス・メディカル)です。
【2010/11/03 21:30】 NAME[そらのふら] WEBLINK[] EDIT[]


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